アースティア大陸の東に存在するグランス島。






そのグランス島においても辺境の村。






キボートス。






すべてはそこからはじまった・・・・












第一章 すべての始まり・・・


 原案・原作・キャラクターデザイン:氷樹一世
キャラクター原案・著:輔、氷樹一世










・・・時は秋。

キボートスにおいても稲刈りの時期。

村人総出で稲刈りを行っている。

「おじさん。」

高さ160ニードに達する稲の間から声がした。

「おう。ミルフィーか。」

ミルフィーと呼ばれた人物。

年齢は16、7歳ぐらいの少年だった。

「今年は沢山取れそうだね。」

「そうだな。」

「これなら今年の冬も過ごせそうだね。」

「豊作だな。珍しいぞ。」

「そうだね。」

「そろそろ、休憩しようよ。ボク疲れちゃったよ。」

「ん? 何だ? 情けないヤツだな。」

「む。」

「その程度でへばっていたらシルフィールに嫌われるぞ。」

「お・・・おじさん! そこでなんでシルフィの名前が出るんだよ!!」

「がっはっはっ・・・・」

シルフィールはミルフィーと呼ばれた少年の幼馴染であり、彼女でもあった。

幼いころ、女みたいな名前であるミルフィーを庇ってくれたりした。

今でも時々庇われたりもしたりすた。

ありふれた平和の日々が続いていた・・・・








・・・・だが、それは突然破られた。








「奴等だ!! ヴョルググの奴等がきやがった!!!」








ヴョルググ。

最凶の傭兵隊。

いや、夜盗といっても差し支えない。

比較的小さい村や襲っては金目の物や売買に出せる女性・子供をさらって行く。

そんな集団がキボートスに現れたのだった・・・・










「く・・・・」

瓦礫の中から人影が動く。

「ボクは・・・・」

瓦礫の中から出てきたのはミルフィーだった・・・

彼の目の前に広がったのは・・・・・物の焼ける匂いと血生臭い臭気に満ちていた・・・・キボートスだった・・・・

「そ・・・・そんな・・・・・」

燃えている民家。

斬られて無残にも転がる村人。

「・・・・・・・・・は!」

ミルフィーは気づく。

「ま・・・・まさか・・・・・シルフィーーーーーー!!!!!

彼女の家に向かう。

そして目についたのは・・・・燃え尽きている彼女の家だった。

「そ・・・そんな・・・・」

ミルフィーは思わず瓦礫をどかし始める。

地下室にでも居るのでは無いかという僅かな希望が・・・・・

しかし、それも破かれた。

・・・・・彼女の両親の斬られ焦げた死体・・・・・

両親のいないミルフィーにとってはおじさんとおばさんは両親みたいなものだった・・・

「あ・・・・あ・・・・」

声も出ない。

膝をつく。

目には涙が浮かぶ。

ふと、目に何かがついた。

「こ・・・これは・・・・・」

ペンダントだった。

彼女の誕生日にミルフィーがあげたペンダント。


ちゃり・・・


手に取る、ミルフィー。

「シルフィ・・・・・」

 

汚れた袖で涙を拭く。

「そうだね。まだ、君が死んだわけじゃないんだよね。ボクは必ず君を探し出すよ・・・・・」











ミルフィーは村を後にした・・・・・・











それから数ヶ月。

争う事が嫌いなミルフィーであったが、一人で生きていく為には剣を手に取る事が必要であった。

また、シルフィの情報を得る為、グランス島のすみからすみまで旅を続けていた。













グランス島西に位置する唯一の大陸との船が出るウォータの町。

大陸との人々が行きかう為、シルフィの情報を獲られると思いミルフィーは数週間前から滞在していた。

「今日も駄目だったか・・・・・」

全身を覆うマントを羽織り、背中には剣を背負ったミルフィーだった。

元々、長髪であった彼は戦闘時に邪魔にならないよう縛ってある。

俗に言うポニーテールである。

髪を切らないのは彼女と再会したときに彼女が見間違えないようにであった・・・・・






ある日。

裏道の悪漢どもから彼女の情報を獲るため宿から出た。

「ん? 何かさわがしいね。」

入り口から出たときだった。


どかっ


「きゃ!」

「うわ!」

横から猛突進してきた女性に吹き飛ばさた。

「いてててて・・・・」

ミルフィーは起き上がると、

「大丈夫?」

と、手を差し伸べた。

「た、助けてください!!」

(え・・・・・)

彼女の顔を見て驚いた。

(シルフィに似てる・・・・・)

その服装や顔立ちは変わったものの雰囲気はヴョルググに連れていかれたシルフィと同じだった。
 
生まれた時から一緒にいたシルフィ。

ミルフィーはその瞬間この少女が数ヶ月前キボートスで自分と共に幸せに暮らしていた大切な人。

シルフィであると確信した。

ミルフィーはさっと気配を探るとすばやく彼女を宿の中にいれた。

(・・・・・・・誰からか逃げてきたのか・・・・でも、その気配はない・・・)

部屋につれていった。




「何かあったの?

「戦士様、ご迷惑をかけ大変申し訳ありません。」

「君は?」

「私はシルフィール・ルーン・ミトゥラです。」

(! やはり彼女だ! でも何故、ボクがわからない・・・?)

「ボクはミルフィー。一応断っておくけど男だよ。」

「は、はい。」

「本題に入りたいんだけど・・・何かあったの?」

「私自身も良くわからないんです。私、数ヶ月以前の記憶もないので狙われる訳もわからないのです。」

(! 記憶が・・・・・!)

その時だった。


ヴォン・・・・


黒い影が現れた。

「君は!? 彼女を追っていた奴か!?」

彼女をかばいつつ、背中の剣に手をかける。

『我が名はシャ=ドゥ。』

「・・・・・」

『貴公には悪いがその少女は貰っていく。』

「出来るかな?」

『貴公は・・・・・氷炎の・・・・・』

「知っているようだね。」

『その少女は女神ルーンの名を持つ者・・・・渡してもらおう・・・・』

「いやだね・・・・」

『そうか・・・・・』

ミルフィーはこのシャ=ドゥの目的に気がつく。

(そういうことか・・・それでシルフィを・・・)

ミルフィーは決めた。

彼女をこの男から、守ってみせると・・・・・・・・・・・





















走った。

目的地はないがミルフィーはシルフィを連れて必死に走った。

黒のスーツを着こなし、灰色の髪を中分けにした男、シャ=ドゥが不敵な笑みをしながら後ろから歩いて来る。

「アイツは一体・・・!?」

「シルフィ、君はこの数ヶ月何処で何をしていたんだ?」

走りながらミルフィーはシルフィに尋ねた。

「わかりません・・・ただ、気が付いたらベッドに寝かされていたんです。」

「そうしたら、なんだか急に鼓動が早くなって、ここから逃げなくちゃ、って思ったんです。」

「そうか・・・」

「戦士様・・・ミルフィー様は私をご存知なんですか!?」

「えっ・・・!?な、なんでそう思うんだい?」

「なんだか私を知っているような物腰ですので・・・違いましたか・・・?」

ミルフィーは迷っていた。

ここで急に「ボクは君の彼氏だ」と言ってもシルフィを混乱させるだけとミルフィーは考えたのだ。

「ボ、ボクは君の友達だったんだ。」

とりあえずこう言うのが彼女を混乱させない唯一の選択肢だった。

「そうだったんですか。」

シルフィは少し気が楽になったのか、険しかった表情が少し緩んでいった。

そしてミルフィー達が足を止めず走った先には。


ザザザァァ、ザッパァァァァン・・・


港だった。

港といっても大陸内で唯一の港、かなりの規模がある。

その中の輸入品を多く格納する倉庫内の一つにミルフィー達は居た。

ここなら滅多に人が出入りせず、被害を最小限で留められるとミルフィーが考えた結果だった。

波が防波堤に打ちつける音しか聞こえない静寂の中、ミルフィー達と対峙する男、シャ=ドゥ。

『シルフィを渡す気になったか?』

ミルフィーはシャ=ドゥの質問に態度で示した。


スラァ・・・


ゆっくり背中の剣を引き抜く音、そして。


チャキリ・・・


無言で剣を構えた。

構えはどこの流派にも属さないものだが、左足を前に、右足を後ろに開き、腰を落とし、腰から上を少し前のめりにし、左手はダラリと下に落とし、剣を持つ右手は後ろへ向け、剣は後ろへ尻尾の様に地面に剣の先端が落ちている。

それはまるで獲物の様子を見ていつでも飛びかかれる猛虎を連想させる体勢だ。

『そうか、それが貴公の「答え」か・・・』

シャ=ドゥは少し嘲笑して。

『おとなしくシルフィを渡さなかったことを後悔するがいい。』

シャ=ドゥは両手を少し開け、ルーン語を詠唱し始めた。

そもそもこの世界には大陸ごとに創造主が存在し、北の極寒の大陸、フィンディバルトを創ったのは還元神オルトン。

周囲に数多くの諸島が点在する大陸、ロウンセーヌを創ったのは月光神ミルティス。

南国の植物の溢れる豊かな大陸、アーサを創ったのは豊穣神ミレイン。

暴風と豪雨に周囲を護られた大陸、ミスティーユを創ったのは龍神ヴァイルだが、戦によって龍神ヴァイルが死去してしまってからというもの、ミスティーユの自然バランスは崩れ、荒廃した大地が広がっているという噂がある。

そしてこれら数々の創造主の中の1人がアースティアを創造した女神ルーンだ。
ルーン語とは、女神ルーンが用いた古代言語の事だ。

ルーン語などの神々が用いた言語には単語ごとに魔力、法力が詰め込まれており、ある一定の配列でさまざまな効果を発揮する事が出来る。

『イル、セムティ、ノル、ゼンディ、イース、カルム・・・ダークネスサーヴァント!!』

シャ=ドゥが詠唱を終えるとこの男の周りの風景が少し歪んだ。

そしてシャ=ドゥの頭上に。

「・・・召喚か・・・」

ミルフィーが小声でそう呟く後ろでシルフィがシャ=ドゥの頭上のものを見て脅えていた。

ミルフィー達の目に写ったものは、無理矢理空間をこじ開けて召喚され、腕と上半身しかない

ダークネスサーヴァントと呼ばれる使い魔だった。

ダークネスサーヴァントとは異次元に住む魔物の一種で、指には鋭い爪が生えており、顔は人の頭蓋骨に似ているが両耳の上から角が、背中からは翼の様に骨が突き出ている。

『貴公には・・・死んでもらおうか。』

シャ=ドゥがそう言うとダークネスサーヴァントが咆哮した。

ダークネスサーヴァントには発声器官がない為音としては聞こえないが、大きく咆哮した口から脳に直接咆えた振動が伝わってくる。

そしてこの咆哮が、シャ=ドゥとの闘いの合図となった。

「はあぁッ!!」

ミルフィーは地面を大きく蹴った。

勢い良く相手の首筋を食いちぎる様にミルフィーは突貫した。

ダークネスサーヴァントの鋭い爪が突貫してきたミルフィーを頭から抉らんとばかりに振り下ろされる。


ブォン!


「当るかよっ!」

ミルフィーはそれを軽やかに避け、攻めの体勢に戻った。

そしてダークネスサーヴァントの懐に入り込み、勢い良く剣を振り上げた!

ーーーーが・・・

「な、にぃっ!?」

外れた?いや、確実に当った。

ダークネスサーヴァントの腰のくびれから左肩まで肉を引き裂かんばかりに斬り上げたが、何故かダークネスサーヴァントには切傷どころかかすり傷も負っていない。

そしてさっきの一撃で決めようと剣に体重を乗せていたのか、外れた分バランスが大きく崩れた。

その隙をついてダークネスサーヴァントの巨大な腕が襲いかかった。

「しま・・・ーッ!」

バランスを崩していたミルフィーに巨大な腕のパンチがめり込んだ。

「ぐ、うぅぅッッ!!!」

そのまま勢いでシルフィの近くまで吹き飛ばされる。

「ミルフィーさんッ、だ、大丈夫ですかッ!?」

「ッ、ててて・・・なんとかね。 でも、なんでアイツには剣が効かないんだ・・・?」

ミルフィーは弾き飛ばされた気負いで手から離した剣を再び手に取りながら防御の体勢で起き上がりながら呟いた。

が、それに応えたのはシルフィではなかった。

『貴公・・・無知にも程があるぞ』

「なっ、なんだと・・・!」

『ダークネスサーヴァントごときに勝てぬようではこのシャ=ドゥには勝てぬぞ』

「だ、黙れェ!!」

ミルフィーは再びダークネスサーヴァントに剣を突き立てた。

ーーーが、やはり効いていない。

そしてダークネスサーヴァントの攻撃をまともに腹に受けた。

「うぐっ、く、くそおぉぉぉぉぉッ!!!」

ダークネスサーヴァントの攻撃をなんとか耐え、再び剣を斬り上げた。

が、今度は当る以前の問題で、ダークネスサーヴァントにはかすりもしなかった。

腹部に受けた攻撃で意識が朦朧としているのか、ミルフィーの眼は光を宿していなかった。

「ミルフィーさんッッ!!!」

後ろでシルフィが必死の声が聞こえるが、ミルフィーには眼前の敵の存在が巨大でならなかったミルフィーにはシルフィの掛け声など気に止める暇がなかった。

「当れ、当れッ、当れえぇぇぇぇっ!!」

闘いが始まった時のあの冷静さは既になく、ミルフィーはやみくもに剣を振り回すだけだった。

が!その時、


ヴゥゥン・・・


ダークネスサーヴァントがミルフィーの攻撃を避ける時、移動した後に微かに風景が歪んで見えるのをミルフィーは見た。

「歪んだ・・・? 歪む・・・空間・・・当らない・・・・・・そうかッ!!」

光を閉ざしていたミルフィーの瞳に再び輝く光が宿った。

そして一度その場を後退してダークネスサーヴァントとの距離を離す。

「・・・シャ=ドゥとか言ったね?」

『そうだ』

「この勝負、頂いた!」

ミルフィーはそう言うと剣を大きく地面に突き立て何か詠唱を始めた。

『ルーン・・・? まさか、貴公もルーンを!?』

シャ=ドゥが驚きと感心を交える表情をしている中、ミルフィーの剣は微振動を始めた。

「ソトゥ・ナキス・エモ・イル・マストゥル・・・」

『私が詠唱を黙って見過ごすとでも思っているのかな!?』

シャ=ドゥがそう言って手をミルフィーにかざすとダークネスサーヴァントが

勢い良く咆哮しながらミルフィーに牙を向ける。

その咆哮の振動でミルフィーの後ろ10メートル近くにいたシルフィの膝が折れ、地面にぺたんとなる。

「ミ、ミルフィーさん・・・!」

ミルフィーはシルフィの喘ぎ声にも似た声を背に、シルフィの前に立ち、全ての危険から彼女を護らんとばかりに微動だにせず立っている。

「ノリィ・ナクセ・ミテューム・セルヴァ・ノル・ソトゥ・・・」

『これで貴公も終りだ!!!』

ダークネスサーヴァントの爪がミルフィーの4メートル手前まで近づく。

「セトナ・レム・ナリィ・ポスク・・・」


   3メートル


『はははははははははははははッッッ!!!!!』


   2メートル


「イリトス・ネ・ナムスク・リービュ・・・」


   1メートル


「ミルフィーさぁぁぁぁぁんッッ!!!!!」


   0・・・!!


ダークネスサーヴァントの爪がミルフィーの額に突き刺さらんとする刹那、

「ノース・メルト・ルーン・ヴィジィア!次元の力よ、我が剣に集え!!」

剣が一瞬青白く輝き、それを瞬時に地面から引き抜き、全体重をのせてミルフィーはダークネスサーヴァントに斬りかかった。






ーーー瞬ーーー






一瞬世界中の時という時が止まった気がしたが、それはすぐに動き始め、ダークネスサーヴァントという固体を地面に落とした。

落下した音はなく、ダークネスサーヴァントは地面に吸いこまれるように没していった。

『・・・な、何故だッ!何故貴公にアレが斬れる!? アレは異次元の生物、我らが生きるこの次元のもので斬れるハズがないッ!!』

「・・・斬れない?だから斬れるようにしたんだ。この剣でね」

『・・・?』

ミルフィーはシャ=ドゥに向かって自分の剣を掲げてみせた。

「この剣は【次元の剣】、またの名を【ディメンション=ソード】。魔力を蓄積し、ルーンを読みあげることで次元・空間を調節出来る能力を持つ。 そしてダークネスサーヴァントが存在する次元に剣の存在を調節して斬ったってわけさ」

『・・・くっ!な、ならば数で勝負するまでだッ!!』

シャ=ドゥは1歩後ろに下がり、再び詠唱を開始した。

『くくくくく・・・見えるぞ見えるぞ。貴公の恐怖に引きつる顔がなあッッ!!!』

ミルフィーは冷静さを取り戻したが、逆にシャ=ドゥは冷静さを失っていた。

よほどこの少年に負けたのが悔しかったのだろう。眼は血走り、呼吸は荒く、口は笑っている。

『ヒヒヒ・・・終りだぁ、殺す。貴公を、貴様を殺す。 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!!』

笑いが絶頂を達した時、無数のダークネスサーヴァントが召喚されミルフィーに一斉に襲いかかる。

だが、

「無駄だよッ!」

斬、斬、斬ッッ!!!

ミルフィーが剣を振り下ろしたと思うと、召喚された全てのダークネスサーヴァントが音を立てず地面に消えていった。

『ぐぅ・・・おのれぇぇぇ!』

我を忘れかけたシャ=ドゥの顔は鬼の形相に変わりつつあった。

『いくらでもッ、いくらでも召喚してやるぞ!貴様が死ぬまでなぁ!!!』

シャ=ドゥが再び詠唱の体勢に入った時、

『無駄よ、シャ=ドゥ』

倉庫奥の深淵の闇の中から1人の女性が姿を現した。

褐色の肌に露出度の高いボディラインが浮き彫りになったレザースーツ。

通常の男性から見れば艶かしすぎるほどの色香を体中から放っている。

『あなたじゃこのボウヤには勝てないわ』

褐色の女性は嘲笑うかのような口調でシャ=ドゥに話しかけた。

『ハッ!何を言うかと思えば、貴様はそんな事を言いに来たのか!? ならばもう貴様には御帰り願おうか!』

『いいえ、そんな事を言いに来たんじゃないわ』

『?、この獲物は私のものだ。貴様にはくれてやらんぞ?』

『そんなボウヤ要らないわ。私はねシャ=ドゥ、あなたを殺しに来たのよ』

その言葉を聞いてシャ=ドゥの眉がピクリと動いた。

『・・・今なんと言った?私を殺すだと?笑わせるな、貴様に殺されるような覚えはない!』

『こっちにはあるのよ。シャ=ドゥ、あなたは少し自分の力を買いかぶりすぎ。 力を持たない者は私達には必要ないのよ♪』

そう言うと、女性の右手から青い球体が放たれ、シャ=ドゥの体を包み込む。

『シャ=ドゥ、消えて頂戴』

シャ=ドゥを包み込む青い球体の面積がどんどん小さくなっていく。

『フンッ、この程度で私を消せるとでも思っているのか!?』

シャ=ドゥが力を入れると、青い球体を跳ね除けるかのように赤い球体が広がった

ーーーが、その矢先、

『ええ、思っているわ♪』

女性が不敵な笑みを浮かべると青い球体の面積は急に小さくなりシャ=ドゥは消滅した。

・・・少しの静寂を破ったのは女性の方だった。

『さぁ〜てとっ、ボウヤ?』

圧倒的な力を見せつけられて、あっけに取られていたミルフィーに女性が軽やかな声で話しかける。

「・・・・・・何だ・・・?」

『そんなに構えなくてもいいわ、別にボウヤを取って食おうなんて考えてもいないし? まぁ、ボウヤから誘ってくれるなら私、ボウヤになら食べられてもいいかなぁ〜♪』

そう言って女性は豊かな胸を優しく掴んでミルフィーに向かって突き出した。

誘惑していると思える行動だが、ミルフィーにとってはただ挑発しているだけにしか見えなかった。

女性と同性であるはずのシルフィにとっては少し刺激がありすぎたのか顔を真っ赤にして口をあうあうとしている。

「ふざけるな・・・」

『あら?興味ないの?こんなに良いカラダしてる私をほおっておくなんていけないボウヤ☆』

「ふざけるなと言っているッッ!!お前は誰なんだ!さっきの男の仲間か!?」

ミルフィーは再び手に力を入れ剣を構えた。

『焦らされるのは嫌い?まぁいいわ、私はシャ=ドゥのお仲間さんよ♪』

「何故・・・何故シルフィを追って来る!?」

『ん〜、まだボウヤが知るような事じゃないわ』

女性がそう言うと倉庫の深淵が彼女を包み込んだ。

『今はそのコはボウヤに預けておくわ、じゃあね、ボ・ウ・ヤ♪』

「ま、待てッ!!」

ミルフィーは女性を追いかけたが、彼女を居た場所には影一つなかった。

「クソッ!」

ミルフィーが地面に向かって怒りをぶつけていた時、

「ミルフィーさん・・・私」

シルフィがミルフィーの背後で申し訳なさそうな顔をして呟いた。

「ごめんなさい・・・私のせいでミルフィーさんまで巻き込んでしまって。」

「・・・いいんだよシルフィ、ボクが勝手に決めて勝手に行動したんだから、 それに・・・」

「それに?」

「シルフィを本当に守るのはこれからみたいだ」

倉庫の外に出たミルフィーは青い空を見ながら再び決心した。










嵐のような暴風と豪雨の中、1つ館に明かりが灯っている。

その館の一室、円形の部屋に魔方陣のような黒い円卓が1つ。

円卓の内側はくりぬかれ、そこからライトが下から上へと照っている。

その円卓には6つの席があり、うち4席が埋まっている。

と、そこへ1人の女性が入ってきた。

『ただいまぁ♪』

軽い声が部屋に響いた。

『遅かったな』

部屋の右端の席に座っていた短髪の男性が話しかける。

『ちょっとね』

女性は部屋にある椅子にぴょんと腰掛けると一息ついた。

彼女の目の前の円卓には白い色で【欲】と書かれている。

汎用語ではないようだ。ルーン語でもない。おそらく別の神が使った言葉だろう。

他の座っている者の目の前の円卓にも白文字でなにやら書かれている。

一番ドアに近い彼女の席には【欲】、右回りにセミロングの赤髪の男には【災害】、長い美しい金髪を靡かせて座っている女性には【嫉妬】、一番奥の席に座っている仮面を着けた男には【混沌】、【欲】と書かれた所に座った彼女に話しかけた男には【破壊】、そして誰も座っていない空いた席の前には【影】と書かれている。

全てが全て、負の代名詞のような名だ。

そして【災害】と書かれた席に座っている男が、

『で?【影】はちぁあんと始末したかい?』

【欲】と書かれた席に座る女性に【災害】が尋ねた。

『もっちろんよ、あんな小物、この部屋に入る資格すらないわよ』

『はっはっは、ごもっとも☆』

【災害】と【欲】が楽しそうに会話している中を、

『シルフィはどうしたの?』

【嫉妬】と書かれた席に座る女性が割りこんだ。

『えぇ、【影】が連れて帰ってくる気でいたみたいだけど、まだあのコの力は必要ないでしょ? だからボウヤの所において来ちゃった♪』

『ボウヤ?』

『えぇ、ボウヤ♪童顔で可愛かったのよぉ、もう食べちゃいたいくらいに♪』

【欲】と【嫉妬】の会話を聞いて大爆笑している【災害】が【破壊】にジロリと睨まれすこし小さくなった。

そして今まで無言だった【混沌】と書かれた席に座る男が、

『あの娘、シルフィの力はいずれ必要になる。それまでは蓄えている女どもの力で カバーするとしよう。果実は成長すれば美味くなる。あの娘も同じだと良いのだが・・・』

『大丈夫、シルフィはいままでで一番良質の【器】になるわ』

【嫉妬】が【混沌】対して答えた。

【混沌】は天上を見上げながら、

『そうだな・・・そうなってくれなければ、我々の復讐計画が水の泡となってしまう』

・・・そして【混沌】が見上げた天井には、龍神ヴァイルが女神ルーンら神々に単身で挑んでいる様子を描いた壁画が描かれていた。

『ヴァイル様、今しばらくお待ち下さい。我々、【絶対なる六星】が必ずやヴァイル様の 恨みを晴らしてみせましょうぞ・・・!』

【混沌】はそう呟いて仮面から見える目を再び閉じた。









 
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